日本キリスト改革派豊明教会

2015年12月6日「新しい喜びに生きる」（ルカ5章33-39節）

「人々はイエスに言った。『ヨハネの弟子たちは度々断食し、ファリサイ派の弟子たちも同じようにしています。しかし、あなたの弟子たちは飲んだり食べたりしています』」（33節）。

当時ファリサイ派の人たちは週2回、ヨハネの弟子たちも度々断食していました。ファリサイ派の人たちは神の民としてふさわしく生きようと真面目に考えました。彼らにとって罪を悔い、悲しむ断食は敬虔な信仰生活として大切な業でした。空腹に耐えるという厳しい経験を自分に課すのです。ところがイエス様と弟子たちを見ると、そのように断食している様子は見られませんでした。それどころか27～32節にあるように、レビが催した盛大な宴会に出席し徴税人や罪人たちと食卓を共にしていました。それはファリサイ派や律法学者たちのように断食を大切に考える人たちには疑問に思えたので、33節にあるとおりイエス様に言ったのです。

これに対してイエス様は「花婿が一緒にいるのに、婚礼の客に断食させることがあなたがたにできようか」と答えられました。当時ユダヤでは婚礼の客は花婿の家で一週間の祝宴を楽しみました。婚礼にたとえて、喜びの婚礼の席で悲しみのしるしである断食を強いることは出来ないと言われたのです。イエス様と出会う喜びは徴税人レビの家での宴会に良く現れています。レビはこれまで神様に背を向けて生きてきました。お金もうけは出来ても神様に愛されている喜びを知らずに生きていたのです。不正な利得等のために人との関係も殺伐としていたに違いありません。それがイエス様に出会ってすっかり変わってしまいました。これまでぽっかり心に空いていた虚しさが、イエス様の愛によって満たされたのです。イエス様が自分の人生の中心にいて下さるようになりました。その喜びを、イエス様を囲む宴会で表したのです。そしてこの喜びに、ほかの徴税人や罪人たちを招きました。花婿イエス様が一緒にいて下さる喜び、これがイエス様によってもたらされた新しい信仰生活の性格です。花婿イエス様が一緒にいて下さる喜びには、悲しみと苦行の断食という古い性格は合わないのです。そのことが新しい服からの布切れと古い服、新しいぶどう酒は新しい革袋に、というたとえで描かれます。

この新しい喜びは悔い改めと結びついています。それは自分の罪と主の十字架を考えないでただ「イエス様があなたを愛している」と言って気分を盛り上げるだけの信仰生活ではありません。花婿イエス様が一緒にいて下さるところでは、私たちが自らの罪を悲しむということが当然起こります。そして「主よ、罪人のわたしを憐れんでください」と胸を打ちたたいて赦しを乞い求めるということが含まれます。しかも罪を悲しまずにおれない自分のために、主がわたしの罪と死を背負って十字架に死んでよみがえって下さり今も一緒にいて下さる、その喜びが沸き上がってくるのです。イエス様のあわれみの中で、罪を悲しむことと結びついた喜びが私たちを包むのです。その喜びを踏まえたうえで、信仰生活の中で、何かについて、あるいは自分の罪について悲しみ、祈りに集中するために断食するということはあるでしょう。それは人から強いられてではなく、自発的にするものです。

ファリサイ派の人たちの断食は決していいかげんな気持ちで行われたのではないと思います。断食をして悲しみ、自分を厳しく律し、真剣に真面目に行われたのでしょう。しかしそのように断食している自分の敬虔に心が向けられ、それによって神様の祝福を獲得できるかのような錯覚と自己満足に陥っていたのでしょう。自分達のようにしていない人たちを見ると、真剣さが足りない、悔い改めが足りない、というふうに他者をさばくようになります。しかもそのような状態を居心地良く感じるのです。その点をイエス様は39節で指摘されました。「また、古いぶどう酒を飲めば、だれも新しいものを欲しがらない。『古いものの方がよい』と言うのである」（39節）せっかくの断食が、イエス様から離れてしまうとこのような状態に陥ってしまうのです。

しかし私たちが救われるのは、私たちの断食、罪を悲しむ真剣さや自分への厳しさによるのではありません。イエス様が私たちの罪と死を背負い、十字架に死んでよみがえられた、その贖いによるのです。イエス様による救いは丁度新しいぶどう酒が古い革袋を破って流れ出すように、私たちの罪と死を打ち破り、私たちを自分に固執する心から解放し、絶望から希望へ、死から永遠の生命へと救い出して下さったのです。そしてイエス様は永遠に私たちと一緒にいて下さいます。その喜びへと、レビの祝宴を共にされて私たちを招いておられるのです。

イエス様は復活の後、弟子たちと食卓を共にされました（ルカ24：30、ヨハネ21：13）。十字架を前に逃げた弟子たち、主を否んだペトロに、その罪を悲しんで断食し自らに苦行を課しなさい、とは言われませんでした。復活の主と再会する喜びの中で、彼らはその弱さを克服され主の弟子として変えられ整えられていきました。主と出会う喜びの宴会は今も続いています。それは礼拝・聖餐式へと受け継がれています。私たちの信仰生活はこの新しい喜びに包まれているのです。