2016年4月10日「多くの罪を赦された人」（ルカ7章36-50節）
ここにはイエス様がファリサイ派のシモンの家に招かれて食事の席に着かれたときの出来事が記されています。シモンの家で食事の席に着かれている時に一人の女性が入ってきて、イエス様の足元に近寄り、イエス様の足を涙でぬらしはじめ、自分の髪の毛でぬぐい、その足に接吻して香油を塗りました。そこに居た人々はこの光景に驚いたことでしょう。この女性は町の人たちから罪深い女として忌み嫌われていました。シモンはイエス様が本当の預言者なら、この女のことが分かるはずだと心の中でイエス様に対して値踏みをしていました。そんなシモンにイエス様はあるたとえ話をされました。
ある金貸しから二人の人がそれぞれひとりは５００デナリオン、もうひとりは５０デナリオンの借金をしていました。けれども二人には返す金がなかったので、金貸しは両方の借金を帳消しにしてやりました。１デナリオンは当時の一日の賃金と言われています。「二人のうち、どちらが多くその金貸しを愛するだろうか」というイエス様の問いに、シモンは「帳消しにしてもらった額の多い方だと思います」と答えました。さらにイエス様はこう言われました。「わたしがあなたの家に入ったとき、あなたは足を洗う水もくれなかったが、この人は涙で私の足をぬらし、髪の毛でぬぐってくれた。あなたはわたしに接吻の挨拶もしなかったが、この人は私が入って来てから、わたしの足に接吻してやまなかった。あなたは頭にオリーブ油を塗ってくれなかったが、この人は足に香油を塗ってくれた」（４４～４６節）。イエス様はこうおっしゃって、シモンよりも罪深い女の方がはるかにご自分を愛していることを明らかにしつつ、「この人が多くの罪を赦されたことはわたしに示した愛の大きさで分かる」と言われました。この女性は自分がどれほど大きな罪を、多くの罪を赦されたかを理解していました。全身全霊でイエス様の赦しの愛を受け止め、赦してくださったイエス様のことを精一杯愛しました。その愛を、このような行動で表したのです。自分の罪の深さと、主の赦しの恵みを想ったときに、涙があふれたのです。
シモンには彼女のしたことの意味が分かりませんでした。彼はイエス様のたとえ話を聞いたとき、５００デナリオンの借金をした人はこの女のことだと思ったかも知れません。少なくとも、自分に罪という借金があるとは思っていなかったことでしょう。ですからたとえを聞いても、それが自分の話だとは思えなかったでしょう。しかしイエス様はこのたとえ話を用いて、赦しの恵みを受け入れず、この女性を裁いているシモンの罪を明らかにされました。イエス様はシモンにも自分の罪を知り、この女性と一緒に主の赦しの恵みを喜び感謝するようにと招いておられるのです。ルカ福音書１５章１１節以下の「放蕩息子のたとえ」と言われるたとえ話で、弟息子の帰還の喜びを、兄息子と共にしようとする父の姿が描かれています。この父の姿とイエス様、兄息子とファリサイ派のシモンが重なって見えてきます。
さきほどのたとえ話の金貸しは、いくらなら返せるかと二人に尋ねてはいません。減額したのでもありません。帳消しにしたのです。それは、「二人には返す金がなかった」からです。５００デナリオン、５０デナリオンは返せなくても、１０デナリオンなら返せるというのではありません。ただの１デナリオンも返すことはできないのです。それが私たち人間の罪の姿です。確かに罪には重い罪、大きな罪があり、それに比べれば軽い罪・小さな罪、という違いはあります。しかしどんなに小さな罪であっても、それを聖なる神に対して償うことは、私たちには出来ないのです。どんなに「小さな罪のさばきであっても、それは永遠の神のさばきに価するもので、私たちはそれに耐えることが出来ません。それほど神様は聖なるお方であられ、人間の罪は大きく深刻なのです。ですからたとえ１デナリオンの罪であっても、それが赦されるためには神の御子イエス・キリストが十字架で死ななければならなかったのです。私たちが赦されるために、主イエスは命をささげてくださいました。私たち人間が神様に背を向けた罪がどんなに深刻で、そのために失ったものがどれほど大きいかが分かります。同時に、どんなに大きな罪であっても、イエス・キリストの贖いによって赦されない罪はありません。主イエスの十字架と復活の贖いによって回復するものがどれほど大きいか、それをこの女性のしたことは、私たちに示しています。私たちがどれほど多くの罪を赦されたかがここから分かります。私たちはイエス様の愛を受け止め、イエス様を愛するほかありません。