日本キリスト改革派豊明教会

2016年11月13日「神の言葉に聞く幸い」（ルカ11章23-32節）

私たちは、神様に愛され導かれていることを信じるとき、安心して生きることが出来るでしょう。けれども信仰をもっている人も、厳しい経験をするときには本当に神様は自分を愛してくださっているだろうかと不安になることもあります。そんなとき「汚れた霊」が私たちを神様から引き離そうとするのです。

この汚れた霊は、人から出て行ってもその人がイエス様と共に歩まないなら、さらに悪い霊を連れて戻ってきてしまいます。ですから私たちは神様の恵みのご支配の許にいないなら、結局汚れた霊の支配に引き戻されてしまうのです。

これらのイエス様の言葉を聞いていたある女の人が、イエス様を産んだ母マリアのことを「なんと幸いなことでしょう」と声高らかに言いましたが、これに対してイエス様は「むしろ、幸いなのは神の言葉を聞き、それを守る人である」と言われました。

この後イエス様は、天からのしるしを求める群衆の声（１６節）に対してお答えになりました。イエス様の奇跡と言葉を目の前で見聞きしても納得せず、もっとはっきりした証拠を見せてほしいというのが、ここで「しるしを欲しがる」人々の心です。「群衆の数がますます増えて来た」（２９）のも、さらに何かしるし見せてくれるのではないかと期待したからかもしれません。これは現代においても同じではないでしょうか。「キリスト教が本物の救いだというなら、その証拠（しるし）を見せてほしい。神がいるなら、その神がキリストだというなら、その証拠を見たい。自分が納得のいくしるしを見たら信じてもよい」という思いです。しかしイエス様はそういう仕方ではしるしをお示しにならないのです。イエス様は天からのしるしを求める人々に対して「今の時代の者たちはよこしまだ」と言われましたが、しるしがあること自体は否定されませんでした。イエス様が語るしるしは人々が求めるしるしではなく、神様が与えてくださるしるしです。そのしるしとはどんなしるしなのでしょうか。

ここでイエス様は旧約聖書から二つの話を挙げておられます。預言者ヨナが大国アッシリアの首都ニネベの人々に神様の言葉を伝えたところ、ニネベの人たちは真剣に悔い改めました。それから南の女王は、神様がソロモンにお与えになった素晴らしい知恵を聞きに遠い国からやってきました。これら二つはイスラエルの人々にとって自分達の国の預言者が異邦人を悔い改めさせた話、また自分達の国の優れた王の知恵を外国人が遠くから聞きに来た話でしたから、誇らしく自慢できる話でした。けれども神様の言葉を真剣に聞いたニネベの人々や南の国の女王は、イエス様の言葉を直接聞いても信じない群衆の不信仰をはっきりと映し出すことになるのです。ニネベの人々にとって預言者ヨナは神様の救いを示すしるしでした。イエス様はヨナにはるかにまさるお方です。神様ご自身だからです。ですからイエス様はこの時代の人々にとっても、また私たちの時代のすべての人々にとっても、神様の救いを示す確かな「しるし」なのです。ニネベの人々がヨナの説教に神様からのメッセージを聞いたように、それよりはるかにまさって私たちはイエス様の御言葉から神様の救いのメッセージを聞くことができるのです。イエス様の御言葉はこの後起こる十字架と復活によって私たちの救いのための出来事として実現していきます。

このように読んでいくと、２４節から３２節は、一見すると三つの話のようですが、結局神様の御言葉に聞くということで一貫していることが分かります。イエス様の御言葉に聞くことで神様の御支配にあずかり、汚れた霊の支配から守られます。だからこそ神の言葉を聞き守る人こそ幸いなのです。今神様の御言葉は、救い主イエス・キリストの救いを示す聖書として私たちに与えられています。ですから聖書を語る説教、教会の宣教の言葉こそが主イエス・キリストに救いがあることのしるしとして今の時代に受け継がれているのです。今私たちが教会で神の言葉を共に聞くとき、私たちは罪と死の支配から解放され、主イエス・キリストの愛と導きによって生きるようにされます。私たちは神の国（神の恵みのご支配）の中に入れられるのです。

ここでシメオンの言葉（ルカ２：３４～３５）を読みたいと思います。シメオンはイエス様について「この子は・・・また、反対を受けるしるしとして定められています。・・・多くの人の心にある思いがあらわにされるためです」と言いました。この言葉の通り、イエス様のお働きによって、イエス様を拒否する人の思いがあらわになっていき、そのためにイエス様は十字架にかけられました。自分の願いどおりのしるしが見られないと、キリスト教は必要がないと言って自分の人生から排除する心、それがキリストを拒否する心です。その心にある思いが聖書を読み、イエス様の言葉に触れることであらわになります。しかしこのことこそが、神が与えて下さった「しるし」です。神様から離れて生きようとする私たちの罪を、キリストが十字架において背負って下さり、復活によって私たちを永遠の生命へと導いてくださったからです。主イエス・キリストが私たちを神様にしっかり結びつけてくださったのです。もう私たちは神様から引き離されることはありません。

私たちは主イエス・キリストによって汚れた霊から解放されました。しかし主は、あとは自分の力で汚れた霊と戦って生きていきなさいと言って、私たちを放り出すようなことはなさいません。主はその愛で私たちを満たして下さいます。神様は、私たちが道をはずれそうなときは警告し、高ぶる時には打ち砕き、正しい道へと私たちを導き返して下さいます。主は私たちの悲しみの時には慰め、不安な時は平安を注ぎ、疲れを覚える時には癒し、そのときどきに行く道を導いてくださいます。それが御言葉に聞く幸いな生活です。この恵みに留まり続けていきましょう。