2016年12月25日「喜びのクリスマス」（ミカ5章1節、ルカ2章8-21節）
主イエス・キリストの誕生をお祝いするクリスマス礼拝をご一緒に迎え、特に今年はひとりの姉妹の洗礼式が行われ、大きな喜びを与えられています。
クリスマスの物語は、神様との出会いの物語です。それも神様の方から私たちに出会ってくださいます。ここに登場する羊飼いたちがそうでした。ユダヤの国の人たちですから、聖書の神様のことは知っていただろうと思います。けれどももしかしたら普段そんなに自分達の生活に関わるような仕方で神様を意識していなかったかもしれません。むしろ羊の群れの番をしていてとても忙しいので、落ち着いて礼拝するという状況ではなかったのではないかと思うのです。ところがそんな彼らに神様の方から近づいてこられました。「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、・・・」とある通り、羊飼いたちの方からではなく主の天使の方から近づいてきたのです。つまり神様の方が、羊飼いたちに関心を持っておられて、一方的に関わって来られるのです。
さて、神様が天使を用いて羊飼いたちと出会って下さるときの様子がこう記されています。「主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた」（９節）。主の栄光が周りを照らす、これは神様からの光です。神様のすばらしさ、人間をはるかに超えたお方からの光が、丁度スポットライトがあてられるように羊飼いたちを照らしました。突然このような光が自分たちの中に差し込んできた時、羊飼いたちは「非常に恐れ」ました。神様がそこにいるひとりひとりに関心をもって御目を注がれたのです。それは単に明るくなった、ではすまないことでした。なぜなら、主の栄光に照らされた人は、そこから隠れることはできないからです。
人の心の中には、誰にも言えないような考え、感情があると思います。人を愛する心、助けようとする心もあるでしょう。しかしそれだけではありません。恥ずかしい思い、欲望、ねたみや憎しみ、怒り、打算・計算、あるいは夢があります。こうした思いがその人の生き方や人生の選択に関わっているのだと思います。人生の選択を迫られたときになぜこちらを選んだのか、あるいは過去のことであの時どうしてあのような行動をとったのかと考えると、人にも自分にもうまく説明できないことも多いのではないかと思います。
そのような心の中も主の栄光に照らされるのです。神様の前には隠すことも取り繕うこともできません。そして完全に聖なるお方、私たちには遠く及ばない力と正しさと栄光、ごまかしなくすべてを裁く権威を持つ神様の光には、私たちはとうてい耐えることはできません。だから羊飼いたちは恐れたのです。永遠の神、聖なる神の前に堂々と胸を張って立つことの出来る人はだれもいません。だから神との出会いには、このような恐れが伴うのです。
しかし天使は告げました、「恐れるな」。そしてこう言います。「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである」（１０－１２）。「布にくるまって飼い葉桶に」というのは識別のためのしるしではありません。このようなお姿の幼子に出会うことが、救い主との出会いのしるしだということです。神様がこの地上に来て下さいました。しかしそれは私たちが耐えられないような栄光の光で私たちをさばいてしまう神としてではなく、布にくるまって飼葉桶に寝かされた乳飲み子として来て下さったというのです。イエス様の地上の御生涯は飼い葉桶に始まり十字架の死で終わります。そのようなイエス様のことを旧約聖書でこう預言されています。「見るべき面影はなく 輝かしい風格も、好ましい容姿もない」（イザヤ５３：２）。神様が私たちのために、栄光の神としての輝かしい風格を捨てて私たちの所に来て下さったのです。
私たち人間はどうでしょうか。少しでもたくさんの「見るべき面影、輝かしい風格、好ましい容姿」を追い求めてはいないでしょうか。しかも人と比べ、自分より輝く人をねたみ、人と争いながら、自分の栄光を求めるのではないでしょうか。それはそのまま人との関わりに現れます。他の人より自分の栄光を追い求め、自分が中心でありたいと願う時、その心の中で他者は周辺に追いやられます。人と人が、民と民が、国と国が、共に生きるのではなく、自己中心や自己主張をぶつけあうようになります。そうなると平和は壊れていきます。そこに人間の闇があります。このような人間の在り方は神の栄光とぶつかります。神様が自分の心の中に関わって来て、自分がしたいことや生き方に関わってくるのは都合が悪いのです。神様の栄光より自分の栄光を求める心があるからです。そのために人は不安や恐れから逃れられないのです。
そのような私たちの所に神様が、飼い葉桶の幼子として来て下さいました。神様に敵対していた私たちを、栄光の光でさばいてしまうのではなく、むしろ罪人のひとりとして数えられ、聖なる神の審判を私たちの代わりに背負うために来て下さいました。私たちには耐えられない神の栄光の光は、イエス様が引き受けて下さったのです。だから私たちはイエス様を通して栄光の神の御許に憩うことが出来るようにされました。イエス様を通して、恐れることなく聖なる神様を見ることができるようにされたのです。聖書を読んでイエス様を信じるとき、神が私たちのすべてを赦し受け止めて下さっていることが分かります。いやむしろ、主イエスの方から私たちの所に来て下さいました。そして今私たちに「あなたがたのために救い主がお生まれになった」と告げておられるのです。神様は私たちのすべてを知っておられます、見ておられます。そしてすべてを受けとめて赦し、愛し、導いてくださっています。私たちは神様のまなざしの中で、赦しと永遠の命をいただいた者として恐れることなく生きることができるのです。神様の前で自分を取り繕う必要はもはやありません。神様の前で見栄を張ったり、自分を輝かしく見せる必要もないのです。むしろイエス様に愛されていることを喜びエンジョイして生きること、神様のすばらしさを表すことに喜びを見出す者とされるのです。１４節「御心に適う人」というのはそのような人のことです。イエス様が私たちを神の御心に適う者にしてくださるのです。
この世界にはまだまだ平和が実現していません。私たちのうちにある自分の栄光を求める心も完全にはなくなっていません。しかし主イエス・キリストを私の救い主と信じるなら、すでに神との平和を与えられています。人との関係においても、自分の栄光ではなく神の栄光を喜ぶことによって平和を造る方向へと生き方を変えられていきます。神様は救いの完成、完全な平和がやがて来ることを約束しておられます。だから希望を持つことができるのです。
私たちは飼い葉桶に寝かされた幼子としてこの地上に来られたイエス・キリストに結ばれて、永遠に神様の愛と祝福に生きる者とされました。今日、この恵みを共にする教会の群れに、ひとりの姉妹が公に加えられました。永遠の神の民として生きる仲間が加えられたのです。クリスマスの大きな喜びが、私たちを包んでいます。