日本キリスト改革派豊明教会

2017年1月1日「新しい年、神と共に歩む」（出エジプト13章17-22節、ヘブライ12章1-3節）

新しい年の歩みを、皆さんと一緒に新年礼拝をもって始めることができ、とても感謝しています。しばらく聖書の言葉に聞きましょう。

さきほどお読みした出エジプト記１３章１７～２２節には、エジプトで奴隷として苦しい生活をしていたイスラエルの民が、神様によって救い出され、約束の地に向かって荒野の旅を始めたときの様子が描かれています。神様は新しい旅を始めた民、荒野を旅する民を昼は雲の柱、夜は火の柱をもって導き、彼らが迷うことなく荒野を旅することが出来るようにされたのです。雲の柱・火の柱は、神様がそこにいてくださることのしるしです。これは神が共にいて導いて下さる新しい旅立ちです。この後民は目的地まで４０年にわたって雲の柱・火の柱によって導かれて荒野の旅をすることになります。

ここに描かれているのは、神が共にいてくださる生活、神に導かれて歩む生活です。私たちは社会との関係、そして人間関係の中で生きています。神様を信じて生きる生活は、社会や人間との関わりだけでなく神様との関係をもって生きる生活です。この世の中の動きも、人との関わりも、この１年さまざまに変化するのではないかと思います。どう変わるか分からない、あるいは予想外のことが起こるかもしれない世の中は、イスラエルの民が旅した荒野のような所だと言えるでしょう。その旅の途中でつらい経験をし、私たちの心の中も飢え渇き、孤独を感じて荒れ野のような状態になることがあるかもしれません。自分がこれからどういう道を歩むことになるか分からないこともあるでしょう。

それでも神様が私たちひとりひとりと一緒にいてくださり、私たちを愛して導いて下さるということは、決して変わることも失われることもありません。それがここで聖書が語るメッセージです。そして信仰生活は、この聖書のメッセージを信じることによって支えられて、荒野のようなこの世を歩いていく生活なのです。

神様がどのように私たちを導いてくださるか、それが１７～１８節に記されています。約束の地はエジプトから地中海沿いの道を北上していくのが一番近道で主要な道路でした。しかしそこにはエジプト軍の施設がたくさんあって、エジプトから脱出した民は恐れをなして引き返す人が出るかも知れません。エジプトに戻ればまた苦しい奴隷生活に逆戻りです。それで神様は彼らを迂回させて別ルートに導かれたというのです。神様は御自分が導く人の状態や能力、弱さをよくご存じです。私たちのことを良く知っておられるのです。そしてその人が歩けなくなって倒れてしまうことがないように、その人にふさわしい道、歩ける道を用意してそちらへ導いて下さるのです。

さて、モーセが指導者としてイスラエルの民を率いることになったのは、モーセが神様と出会ったところから始まります。その時のことが３章に記されています。この時モーセは８０歳でした。実はさらに４０年前、彼は自分で同胞イスラエルをエジプトでの抑圧から救おうと行動を起こしたことがありました。しかし失敗し、同胞からも受け入れられず、エジプト王から命を狙われ逃亡するという苦い経験をしました。彼はそれから４０年ものあいだ逃亡先でひっそりと羊飼いとして暮らしていたのです。願いがかなわなかった過去の挫折を胸に秘め、それを自分の中で整理し克服したわけでもなく、傷を抱えたまま生きていたのです。彼はそこで家庭を持ちましたが、自分の子どもに「わたしは異国にいる寄留者（ゲール）だ」と言ってゲルショムと名付けています。家族はいるものの孤独感と、本来いるべき場所ではない所にいるような気持をもっていたのでしょう。神様が共にいて導いて下さっているというリアルな神様との交わりに生きていたとはとうてい思えません。そんな彼に神様は、御自分の方から一方的に語り掛け、逃げようとするモーセを指導者としてお立てになったのです。「私が共にいるから」、といって励まして立たせたのです。

一方イスラエルの民は奴隷の生活で苦しめられ、嘆き、助けを求めて叫んでいました。神様はそれをしっかり聞いて救い出すための準備を進めておられましたが、民は実際にエジプトから救い出されるまではそれを知りませんでした。

ですから出エジプトは、傷を抱え孤独感を抱えながらひっそりと暮らす、あるいは苦しみにあえぎながらも誰にも助けてもらえずにいる、そういう生活から救い出されて脱出し、神が共にいてくださり導いて下さる生活、神の愛と支えによって生きる歩みへと力強く招き入れられる救いの出来事だったのです。

神様は聖書の言葉を用いて私たちに出会って下さいます。聖書を読むことによって私たちも神様と出会い、神が共にいてくださり、明るい時も、暗い時も神様が荒野の旅路を救いの完成へと導いて下さる、そういう人生へと招き入れられるのです。神様の方から、私たちひとりひとりに関心を持ち、関わりをもって下さるのです。私たちにとって火の柱・雲の柱は主イエス・キリストです。聖書を通して主イエス・キリストを信じるとき、私たちは確かな神様の愛と導きに支えられます。

私たちが今見つめるべきイエス・キリストというお方のことがヘブライ人への手紙１２章２節でこう記されています。「このイエスは、ご自身の前にある喜びを捨て、恥をもいとわないで十字架の死を耐え忍び、神の玉座の右にお座りになったのです。」イエス様は飼い葉桶に始まり、十字架に至るこの世の生涯を歩まれました。主イエス・キリストはそのようにして私たちの所に、人となって来てくださった神様です。輝かしい姿を捨て、恥に満ちた十字架の死を耐え忍ばれました。そして復活されて神の玉座の右にお座りになりました。これは私たち人間が抱える罪と死の重荷を背負い、その力を打ち砕き、勝利して、私たちを罪の赦しと永遠の生命に生きる者として下さったことをあらわします。イエス様は荒野のようなこの世を旅する私たちの重荷を、すべて知り尽くしておられます。私たち人間の抱える恥ずかしい実態、心の闇と言われる罪の重荷、すべてを御存じで、それらをご自身の恥として十字架で背負ってその力を打ち砕き、私たちを罪と死の力から解放して下さったのです。私たちは罪と死の重荷を自分で背負わなくてよくなりました。主イエスが御自分の重荷として背負ってくださったからです。モーセは同胞を救おうとして挫折したことがありました。モーセはひとりのエジプト人が同胞ヘブライ人のひとりを打っているのを見て、彼を助けようとしてそのエジプト人を殺害したのです。その時彼は辺りを見回して誰もいないのを確かめて殺害し、その死体を砂に埋めています。正々堂々と解放運動を起こしたというには恥ずかしい実態です。砂に埋めずにおれないような恥ずべき罪を抱えていたのがモーセでした。神様がモーセに語り掛け、新しい使命を与えられたことには、罪の赦しがそこにあったといえるでしょう。新しい出発には、すべてを知る神様の赦しが必要なのです。

主イエス・キリストの十字架は、私たちが砂に埋めて人目から隠していた恥ずかしい罪の重荷がそこで背負われ、私たちが赦されたことを表しています。その上でイエス様は、私たちの信仰の創始者また完成者となって最初から最後まで共にいてくださるのです。この年も私たちはその時々に課題に向き合い、悩み、あるいは迷いながら、歩んでいくことと思います。しかし聖書の言葉に聞き祈りつつ歩む、主イエスを見つめる歩みは、神様が愛の中で道を示し、歩かせてくださる歩みです。私たちは、気力を失い疲れ果ててしまいそうになるときも、主に支えられて忍耐強く走り抜くことが出来るようにされます。主イエス・キリストは、火の柱・雲の柱として私たちの先頭にいてくださいます。そこから離れることは決してありません。