日本キリスト改革派豊明教会

2017年4月30日「神の国の成長」（ルカ13章18-21節）

イエス様は「神の国は何に似ているか。何にたとえようか」とおっしゃって、２つのたとえをお語りになりました。「神の国」はここでは「イエス・キリストの恵みのご支配」ということが出来るでしょう。

まず神の国はからし種にたとえられます。からし種は当時のユダヤでは小さい物の代表として使われましたが１ミリにも満たない物です。それが成長して３メートル、４メートルにもなると言われます。そしてその枝に空の鳥が巣を作るというのです。

もうひとつはパン種です。１サトンは約１２．８リットルですから３サトンは約３９リットルになります。普段ユダヤの家庭で作るパンに比べれば大量のパン粉です。そこにパン種を入れると多量のパン粉の中に隠れてしまいますが、やがてその影響はパン粉全体に及んで膨らむのです。

この二つのたとえに共通しているのは、はじめと終わりの桁外れの違いです。始めは本当に小さく目立たないものが、鳥が巣を作るほど大きくなり、あるいは多量の粉全体に影響を及ぼすと語られています。このように始まりと終わりのとてつもなく大きな違いが強調されていることです。神の国の始まりはまことに小さなものですが、その終わりは始めの小ささからは想像できないような大きさになるのです。

次にこの二つのたとえの違っている点は、からし種の方は小さいものが大きくなっていくという外側に現れて来る神の国の進展を物語っているのに対して、パン種のたとえは神の国が相手の内部に働き、その中身を変える力を表すということです。３サトンという多量のパン粉の中に、わずかな量のパン種が入っただけなのに、それはパン粉のすみずみまで変えてしまい、その影響の及ばないところはどこにもなくなるということです。そのように神の国も、小さな始まりであっても、神の国に生きる人の全体を変えてしまうのです。

ですからこのたとえは、成長する過程を見ることよりも、まことに小さな始まりと桁違いの終わりの大きさに注目するように私たちを導くのです。私たちは本当に小さな神の国の始まりを見て、鳥が巣を作るような大きな神の国の成長と、大量のパン粉にいきわたる神の国の力を信じなければなりません。そのような将来を、希望をもって信じるようにというメッセージがここにあるのです。

１８節に「そこで、イエスは言われた」とありますので、このたとえは１０～１７節に記されている出来事とつながっていることがわかります。１８年間病の霊に取りつかれていた人がイエス様によって解放された出来事は、まことに小さな始まりに過ぎませんでした。しかしここに始まった出来事は、今世界中でイエス・キリストによる罪と死からの解放として続いています。イエス様の救いに生きる教会と、そこに生きる信仰者が与えられている永遠の命、そのような形で神の国は私たちの所に来ています。世界中の誰でも、主イエスを信じることによって、キリストによる救いという神の国に、自分の居場所を持ち、そこに憩うことが出来るのです。実際に2000年前のユダヤでの出来事が、今日世界中に広がり、多くの人々が主イエスを救い主と信じています。

そうはいうものの、今なおキリスト者は少数で、キリスト教会はからし種のようだし、ひとにぎりのパン種のようでもあります。この御言葉はそのような現実の中で神様が語っておられる御言葉です。

このたとえでは種を蒔く人、パン種を混ぜる人がいます。これを神様が種を蒔き、パン種を混ぜると理解することが出来ます。そしてからし種やパン種を救い主イエス・キリストと理解するのです。神様は救い主キリストを世にお送りくださいました。主イエス・キリストはこの世で人々の上に権力をふるって力で支配するのではありません。むしろ誰よりも小さくそして低くなられて、私たちの罪と死を背負って十字架に死なれました。この世にあってからし種のように誰よりも小さく、この世でパン種のように隠れてしまわれたのです。しかしそのままで終わらず、死に打ち勝って復活されました。イエス様のご生涯と十字架の死と復活は、まことに小さな始まり、人々の間に隠れたような始まりでした。しかしキリストを死からよみがえらせた神の力によって、わずかな人達の信仰から、全世界に広まり、今このお方の許に、この木の枝に私たちは誰でも巣を作って憩うことが出来ます。さらに主が再び来られるとき、神の国の完成、私たちの救いの完成の時が約束されています。その時こそこのたとえが完全に実現する時です。

私たちの日々の生活や教会の歩みにはなお苦難があります。神様の恵みの御支配はなおからし種のように小さく、パン種のように隠れて見えないような現状があります。イエス様はそのような私たちを励まし支えるために、このたとえを語ってくださいました。目の前の現実に向き合いながら、隠されている神様の救いの恵みを信仰の目をもって見るようにと主は私たちに語りかけておられるのです。

私たちは今、死に打ち勝った主イエス・キリストの命に与り、キリストに結ばれて礼拝をささげています。ここに神の恵みのご支配が現れています。私たちは主イエス・キリストの恵みのもとに巣を作り、そこに永遠に憩うことができます。なお罪や弱さの残る者ですが、身も魂もすべて主の救いの中に入れられています。神の愛のご支配は、この身と魂のすべてに及んでいます。私たちは罪を赦され、永遠の命を与えられ、朽ちる者から朽ちない者に変えられています。今はそれが小さなもの、隠れたものにしか見えなくても、確かに神の国は私たちの所に来ています。やがて私たちには罪と死から完全に解放される救いの完成の時が来るのです。からし種とパン種のたとえで、イエス様は確かに約束して下さっています。主の約束に力づけられて神の国の進展に仕えていきたいと願っています。