日本キリスト改革派豊明教会

2017年10月8日「求め続けるべきもの」（ルカ18章35-43節）

エリコの近くで物乞いをしていた盲人は、主イエスがお通りになると聞いたときに、主イエスとのコンタクトを求めてなりふりかまわず叫び続けました。彼は、目が見えないために物乞いをするしかなく、人々の憐れみを受けて施してもらうことによってしか生きることが出来ませんでした。その長年の苦しみの中で、自分のみじめさをいやというほど知らされていました。自分の努力や力によってはそこから救われないこと、表面的な支えや助けはある程度役には立っても、根本的な救いを与えるものではないことも経験していました。そして自分の苦しみや惨めさを取り繕うことなどできないことも知っていたのです。だから今自分の近くを通って行こうとする主イエスに「ダビデの子イエスよ、私を憐れんでください」と、なりふりかまわず叫び求めました。周囲の人達から止められても叫び続けたのです。聖書は私たちの心を、この人の信仰に向けさせようとします。この人はどうしようもない惨めさの中で、主イエスこそダビデの子、救い主と信じて、その憐れみを切に求め、それによりすがりました。周りの人達が止めるのに屈せずに求め続ける彼の熱心と忍耐は、主イエスでなければ自分を救う望みはないという思いから出ています。彼は「私を憐れんでください」と叫ぶほどに、自分の小ささと惨めさを知っていました。しかし彼は、主イエスが目の見えない自分の救い主であることを信じ、この自分に対しても愛を向けてくださることを求めて叫び続けたのです。主イエスはそれを「あなたの信仰」と呼んでくださり、あなたのその信仰があなたを救った、と宣言してくださって、彼の目を開いてくださいました。

この人はここで、主イエスによって目が開かれたことによって、目が見えないことよりもっと深い問題に救いが与えられました。肉体の目が見えるようになること以上に、自分が本当に願い求めていたこと、本当に必要なことを与えられたのです。彼はこれまで、本当に信頼して人生を委ね、従っていくことが出来る方と出会うことが出来ていませんでした。しかし今、そのお方に出会うことが出来たのです。そして弟子となり、従っていきました。

この目の見えない物乞いの叫びを主イエスは聞いてくださり、エルサレムへ向かう大切な旅の途中で立ち止まって目を開いてくださいました。私たちも神様の前には主の憐れみによってしか救われる望みのない物乞いでしかありません。しかしこの癒しの記事によって、私たちはその心が暗闇の中にいて、周りが見えなくても、叫ぶことが出来ること、私を憐れんで下さいと呼びかける相手がいることが示されています。私たちが床に伏せっていても、心身の疲れを覚え、前向きになれないでいるときにも、自分が抱える重荷に耐えられないと思う時でも、「助けてください、憐れんでくださいと、私たちは主に向かって叫ぶことができるようにされています。ですから私たちは自分で強くならなくてもよいのです。自分で重荷をすべて抱え込まなくてもよいのです。自分で敬虔な信者だと思えるようになろうとしなくてもよいのです。私たちは主イエスに向かって、「ダビデの子よ、私を憐れんでくださいと叫ぶことが出来るからです。

主イエスは十字架へ向かう途上の緊張した中にあっても、その足を止め、目の見えない物乞いの目を開いて下さいました。丁度そのように主イエスは今、私たちひとりひとりのために足を止め、「何をしてほしいのか」と尋ねてくださいます。私たちが主イエスに頼る信仰の言葉を語ることが出来るようにしてくださいます。「主よ、見えるようになりたいのです」と盲人の物乞いは主イエスに答えました。私たちも見えるようになりたいのです。主が私たちの信仰の目を開いてくださるとき、私たちは自分が神様に背を向けて生きようとする罪をもっていること、その私の為に主が足を止めて、私の目を救い主が見えるように開いてくださることを知ることが出来ます。そのために主イエスが成し遂げて下さった十字架の死と復活の意味を知る信仰の目が開かれます。

エリコの盲人は見えるようになり、神をほめたたえながら、主イエスに従いました。主イエスに従っていったなら、彼がこの後エルサレムで主の十字架を見た可能性は十分あります。そこで開かれた目で何を見たかというと、物乞いの盲人だった彼の闇を背負い、自らの命をもって贖ってくださる主イエス・キリストのお姿です。

ルカ福音書を読んでいて、主が見えるようになること、信仰の目が開かれるということが大切な主題になってきていることが分かります。それがこの場面ではまだ弟子たちには見えていません。彼らは、自分の物を捨てて主に従ってきたと言っています。しかし受難・復活予告を理解しませんでした。その意味を理解するのは復活の主に出会ってからです。２４章にはエマオ途上の弟子たちの目が開かれて、一緒に歩いて下さっていた方が主イエスであることに、目が開かれて見えるようになったという出来事が記されています。その出来事を、このエリコの盲人の癒しは先取りしています。

私たちは礼拝でルカ福音書の御言葉に聞き続けています。このエリコの盲人の記事、そして十字架、復活、エマオ途上の弟子たちの記事へと読み進んで行きます。そのように聖書の言葉に聞く私たちは、ここで描かれる主イエスの御業、目の見えない人の信仰の目を開いてくださる御業に、私たち自身が招き入れられていきます。主が私たちの頑なな心を砕いてくださり、主イエスの十字架と復活の意味が分かるようにしてくださいます。主イエスが私たちの教会と共にいてくださって、恵みを注いでくださっていること、私たちの重荷を背負って下さっていることに、私たちの信仰の目を開いてくださいます。その主の御姿が見えるようにしてくださいます。「見えるようになりたいのです、と叫ぶ私たちを主は受けとめてくださり、「あなたの信仰があなたを救った」と言ってくださって、信仰の目を開いてくださるのです。