日本キリスト改革派豊明教会

2018年3月11日「主が整えてくださった食卓」（ルカ22章14-23節）

「神の国で過ぎ越しが成し遂げられるまで、わたしは決してこの過越の食事をとることはない」（１６節）、「神の国が来るまで、わたしは今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してあるまい」（１８節）。これらの主の御言葉は、終末に実現する天の御国での祝宴の席、救いの完成の時までは過越の食事をしない、ぶどうの実から作ったものを飲まないという、断食を宣言するような言葉です。主イエスはご自分が地上を去った後、厳しい信仰の戦いをしなければならない弟子たちと私たちに、主が共に戦うことを宣言してくださっているのです。

天の御国は丁度過ぎ越しの食事のように、神様の祝宴にたとえられます。過越しの食事は過去に起こった出エジプトの出来事を記念するものです。主イエスは過越しの食事の意味を、未来の終末に向かい前に伸ばし、やがて来る天の御国の祝宴を指し示す意味をお与えになりました。その天の御国での食卓を、私たちが地上の信仰の戦いを終え、天に行くまで主は待っていてくださいます。そしてそれまでの間、主は私たちの信仰の戦いを共に戦って支えてくださるのです。主イエスはここで、その救いの完成が差し迫っていること、必ず来ることを弟子たちに見つめさせようとしたのです。

主イエスはさらに「あなたがたのために与えられるわたしの体」（１９節）、「あなたがたのために流される、わたしの血による新しい契約」（２０節）と言われました。過越しの子羊は、主イエスが十字架で血を流して、私たちの罪と死の悲惨、神に見捨てられる悲惨を背負ってくださったことを表しています。イスラエルの民がエジプトでの奴隷状態から解放されるために子羊が命を失い、血を流さなければならなかったのと同様に、私たちが罪と死の奴隷状態から解放されるためには、主イエスが十字架で血を流さなければならなかったのです。そして今、主イエスは私たちの信仰の戦いを支えてくださっているのです。

このことを約束するために、主イエスはこの食卓を共にしたいと切に望んでおられました。それは主イエスがとても強く願っておられたことです。この食事を私たちは聖餐式の制定として理解しています。聖餐式は天の御国での食卓の先取りです。私たちが洗礼を受け、この食事を共にすることを、主イエスは切に願っておられたのです。私たちが聖餐式に与るのはここで語られた主イエスの強い願いに基づいています。私たちはこのことをどれだけ真摯に受け止めているでしょうか。私たちは、聖餐式に与る恵みをどれほど切望しているでしょうか。このことを忘れてはいけないのです。この主の切望に根差した過越しの食卓に、弟子たちは招かれました。それは主が整えてくださった食事であって、このように特別な意味があったのです。

主イエスは十字架で死刑囚として死なれました。神から隔てられ、神に審かれるということがどういうことかを、誰よりも深く背負われたのです。そのことを真剣に受けとめるとき、私たちがどれほど神に愛されているか、そのために主がどれほどの御苦しみ引き受けて下さったかを知り、畏れを覚えます。同時にこれまで知ることのなかった神の愛を知り、大きな喜びを与えられるのです。

聖餐式が教会で行われ、私たちがそれに与ることは、私たちと教会が十字架による救いの中に、新しい契約の中に立つことを意味します。その意味では、神の国の過越しの食事は、今すでにここに始まっているということができます。主イエスは、目に見える形ではありませんが、霊において私たちと共にいて、この食卓を用意してくださったのです。私たちはここに共に座ることが出来るようにされたのです。

主イエスが来られるまでは、神様は人間が罪人であること、身代わりの犠牲によって罪が赦されることを、動物をささげるという儀式によって示されました。今度は動物ではなく主イエスが十字架にかかられてからは、主イエスを信じて従うということで、私たちの心にその律法が刻まれるようになりました。聖餐式という外面的な行為そのものに魔術的な力があるのではありません。主イエスが、この聖餐式を用いて私たちの信仰を養ってくださるのです。信仰をもってこれを受けることが大切です。だからこそ、これは信仰を告白した人が受けるのです。自己吟味というのは、自分が聖餐式を受けるにふさわしい合格点であることを確認するということではありません。私の罪や弱さを主が御存じであり、この主の十字架にのみ、自分の望みがあることを確かめることです。信仰は、主により頼むことです。私を愛してくださった主イエスの十字架の犠牲によって、私たちは永遠の命をいただいたのです。

神が定めてくださったこの食卓にあずかり、主を記念し続けることは、十字架によって実現する過越しの完成の恵みにあずかり、罪を赦され、その支配から解放されて神の民として生きる者とされたことを表します。私たちは聖餐式においてキリストの十字架の犠牲の恵みに与ります。そして主イエスと結び合わされる恵みを新たにされます。主イエスは「苦しみを受ける前に、あなたがたと共にこの過越の食事をしたいと、わたしは切に願っていた」（１５節）と言われました。私たちは主の切なる願いを受けとめて聖餐の恵みに与りたいと思います。